aircordのもの作り集団によるもの作り集団のためのオフィスと働き方

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株式会社aircord
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毎年夏に開催される大規模な国内音楽イベントの代表格の一つ、フジロックフェスティバル。今年、電気グルーヴのライブ映像制作、プロジェクション演出で参加した『株式会社aircord』。「メルセデス・ベンツファッションウィーク」にて、TARO HORIUCHIのファッションショーでのライティング演出を行ったり、東京駅丸の内駅舎で行われたプロジェクションマッピングに参加したりと、その活動領域は幅広く多岐に渡る。映像やテクノロジーを用いた演出や開発も行い、受賞歴も多数。同社でクリエイティブプロデューサー及びテクニカルディレクターとして指揮を取る橋本俊行氏に、そうしたクリエイティブな作品を生み出す現場作りについてお話を伺った。

なぜオフィス環境に投資したのか

2013年6月に、元々愛着があったという創業地恵比寿へ、広尾から戻る形で移転。広尾と恵比寿の中間ほどに位置する、建築家 石原祥行氏設計のビルの3階と4階にオフィスを構えている。このコンクリートとガラスで形作られたシャープな建築もまた、aircordの活動の魅力を助長させているように思える。この箱にどのような空間を演出しているのだろうか。

橋本氏:恵比寿は元々愛着もありました。打ち合わせもしやすく、静かで立地条件の良さも気に入っています。あとは業種的に渋谷区でクリエイターが集まる場所で、ブランディングの一つとして選びました。対外的な要素だけでなく、社内的にもアクセスしやすく、フロアが分かれているので作業を分けてできるということも大きいですね。物件探しの際にもそこは考えていました。入居時は4階のみで、3階は1年半前に増設しました。プロジェクションマッピングや簡単なデモンストレーションを行うことが多いので、それにはワンフロアだけだと手狭だなと。
何か大きなきっかけがあったというよりも、機能的な部分で社内環境を良くしたいとか、クライアントに対してぱっと入ってきた時の見た目を良くしたいといったように常に変化させたいと思っているので、見える部分で人に与える印象ということを特に意識しています。建物の構造自体が変わっているので何もしなくても様になるのですが、そこを活かした空間にしたいなと思っていました。

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オフィス環境変革後の変化や反響

オフィスは「生き物」といわれるが、aircordのオフィスはまさにそれを体現している。常に変化をくり返してきた同社のオフィスに対する社内外の反響とは。

橋本氏:打ち合わせでお客様がいらした時に意外だとよく言われるのは、「デジタル系なのでもっとごちゃごちゃしているかと思ったけど意外とすっきりしてるんですね」とか、「見る度に変わってるよね」、などとよく言われます(笑)。一気に全て手をつけるのではなく、少しずつ手を加える事で、日々変化していると思います。あとはスタッフ曰く、それぞれの作業に合った場所や設備の演出をすることが心理的にも影響して、その変化がおもしろいのだそうです。機能的になりましたね。単純にフロアが増えると物がそこに置けるので、空間における役割が増えていくじゃないですか。ワンフロアでも完全に区切られていれば同じだとは思いますが、フロアが上下に分散されていることは心理的に全然違うんですよ。音も気にしなくていいし、より集中できて、意識が変わると思います。
それから、場所が増えたことによってできる作業も増えたので、最近は机を作ったりするようになりました。電源があって解体して現場に持ち運びできるという作業机です。空いた時間に使うメンバーが作るのですが、仲の良い大工さんと一緒に作ったり、ドアを塗ったり。当初は家具は全て買って揃えてきたので、自分たちで作るという発想はなかったですね。ものづくりが加速化できる環境が作れたからこその変化だと思います。

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クールな機能性を持つオフィス

物件が決まってから完成まで約一ヶ月というスピード移転。内装工事を全くしなかったため、最低限仕事ができる環境になるまで然程時間を要さなかったのだそう。何もない空間から始まり、現在も少しずつ確実に変化を遂げている同社のオフィス。機能性を満たしつつ見た目の印象にも気を遣ったという空間とは、どのように作られていったのだろうか。

橋本氏:全体的に機能面と見た目のバランスを重視しています。すっきりシンプルで、デザイン性もあるオフィス作りを目指しています。機材はどうしても増えていくので、どこに何があるのか分かって時間のロスにもならないよう工夫しています。
4階のミーティングスペースはお客様ががいらっしゃるスペースなので、打ち合わせのみに使っています。元々ドアも何もなく、冬は結構寒いので壁とドアを付け足したり、遮光環境を作ったり、5.1chの音響システムを追加したり、プロジェクターを吊るしたりと色々やりましたね。ここでデモを行ったりするので、次世代照明のhueを全室に導入し、社内で独自アプリを開発して、自由に色を変えられるようにしました。各階で調光できるので、撮影時にも役立っています。
テーブルやイスも“aircordブルー”(コーポレートカラー)に合わせてこだわって選んでいます。前のオフィスから持ってきたものと新調したものとどちらもありますね。テイストが一環しているので、場所が変わっても違和感がないというか。部屋によって嗜好を変えていますね。3階のラボは工房っぽい感じで木を使っています。机とイスも木ですね。それから同じ階に専有のベランダがあって、天気がいいとそこでランチをしたり、軽くミーティングをしたりすることもあります。

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今後取り組みたいオフィス環境作り

変化の過程が好きだという橋本氏のオフィス環境への野望は、現在のオフィス空間に留まらず、世界へと向いている。軸はあくまで“良いものを良い仲間と作り続ける”ということ。それができる環境作りは、働くスタイルそのものでもある。現在進行形オフィスの今後の展望とは。

橋本氏:可能であれば、少し離れてもいいので大きなスタジオスペースが欲しいんです。実験スペースに使えるような天井5メートルくらいのスペースが欲しいですね。オフィスも手狭になってきたので、作業スペースは広げていきたいなと思いますね。そうすると移転になっちゃいますけど…。理想は地下があって3階建ての建物一棟をオフィスにしたいですね。
ものづくりをもっとプロフェッショナルにやっていけたらいいなと。もっといいものが作りたい。それには人や環境が必要だよね、となります。あくまで人数勝負ではなく、必要最低限で今後もやっていきたいですね。「クリエイティブチーム」といったような立ち位置で。
働き方としては日本国内に限らず海外のクリエイターと組んだりして、ハブを作っていきたいなと思います。いろんなところに色んな人がいて、時差発注とかできたらおもしろいですよね。僕らの仕事は特に国境はないので、将来的に海外にハブを設けるとか。そういう意味では仕事の仕方、スタイルを今後も作っていきたいなと思います。

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Pick Up  “ここが、aircordらしさ“

■物品購入制度
昨年末からaircord社内で、スタッフに欲しいもののアンケートを取り、リスト化してそこから購入するか否かを決めているそうだが、もちろん無駄遣いはしないが、業務上実際に触らないと分からない物や、試してみないと分からない物もあるので、スタッフの要望にはできるだけ応えるようにしているのだとか。

■社内プロジェクト「PPP」
子供に向けた未来の玩具や遊びを作るプロジェクト”PPP”。橋本氏と佐々木氏の計二名で立ち上げた。きっかけは、震災後に橋本氏の子供が生まれたことで、より身近になった“子供”に対して、今までaircordでやってきたクリエイティブの経験を生かして、何か表現出来ないかと考えたからだそう。立ち上げ当初は自由にワークショップを行ったりもしており、そこから徐々に仕事が来るようになったのだとか。「PPP」用の名刺は裏表両面印刷になっており、表は子供にも読めるよう全て平仮名で表記され、裏を返すと通常の漢字表記にしている等、遊び心も満載だ。
「PPP」は子供の目線が重要なので、子供スタッフがいてもいいのではないかという話もあるとか。オフィス空間を作るとしたら、子供が遊べるようなポップな環境、たとえばブランコがあったり、床を芝生にしたり。「遊びを通して表現していくこと」をテーマに、オフィス空間も遊び心のあるものを作りたいという。子供は直観的に反応するので大人と違いある意味非常にシビアだが、面白くないことは面白くないとはっきり言われてしまうことも、フィードバックとして面白いのだとか。将来的にはaircordと分離させて業務を行うことを視野に入れているそう。

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