システム開発の気鋭ベンチャー、ヴェルク株式会社がつくった 居心地の良いDIYオフィス

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ヴェルク株式会社
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代表取締役 田向祐介さま

受託開発と自社開発の両立を目指し成長を続けるヴェルク。メイン事業はWEBシステムやスマホアプリの受託開発だが、クラウド型バックオフィス業務・経営管理システム「board」やスマートフォンアプリを手軽に構築・運用できるCMSサービス「Patto」など自社サービスの開発事業も好調。業績を伸ばしている。

春はお堀端の桜並木が美しい市ヶ谷駅にほど近いオフィスは、2014年にDIYでつくった。板張りの床、木製家具などナチュラルな雰囲気を活かしたインテリア、静かにジャズが流れるカフェのような心地良い空間には、代表取締役の田向祐介さまの仕事への愛情とこだわりが秘められている。

 

なぜDIYでオフィスを作ったのか

執務スペースとミーティングスペースで構成されたオフィスの面積は約18坪。なぜDIYでつくろうと考えたのか。経緯などをうかがった。

――こちらに入居する前はどのようなオフィスだったのですか。

田向:お台場にある東京都中小企業振興公社が運営する創業支援のためのインキュベーションオフィスに入居していました。パーテションで区切られているのではなく、壁で仕切られた小さな個室のオフィスです。大きなビルなので設備面は充実していましたが、お台場に出るまでのアクセスがちょっと不便でした。

また、システム開発は基本的にデスクワークが中心なので、オフィスの居心地がとても大切なのですが、自分達の好きなように空間を変えることもできなかった。そうした理由から2014年2月に市ヶ谷に移転しました。

――このオフィスはすべてDIYでつくられたとのことですが。

田向:はい。ロゴの金属加工以外はすべてDIYです。お台場のオフィスにいながら3カ月ほど作業期間を設けて僕ともう一人が中心となって少しずつ進めました。壁の塗装と床材を敷く作業はメンバー総出。僕も含めてそれまで誰もDIYの経験はなく、全員がむしろ苦手なほうでしたね(笑)。

――ではなぜDIYでつくることに?

田向:一番の理由はコストです。オフィスづくりには百万単位のお金がかかりますが、起業4年目でその金額を投資できるかは微妙なところ。新しいオフィスに入居したあと何年そこに居るかランニングコストも考えなければならない。成長フェーズだから判断が難しいんです。とはいえ居心地の良いオフィスにはしたいし、どうすればお金をかけないでつくれるかを考えたときにDIYという選択肢が生まれました。

――居心地の良い空間にするうえで、こんなふうにしたいというイメージはありましたか。また、オフィスを自分達でつくったことで生まれたメリットなどはありましたか。

田向:イメージしていたのはカフェです。木をたくさん使ったやわらかな雰囲気のオフィスにしたいねと皆で話していました。

お客様にも好評で、自社のオフィスよりも雰囲気が良いからと打ち合わせはこちらに赴いてくださるお客様も多いんですよ。DIYだと話すと皆さん驚きますね。特に2年半前の完成当時は今以上に珍しかったので印象に残りやすかったようです。お金をかければ普通に良いオフィスはつくれますが、僕らはベンチャーが出せるお金で良いオフィスをつくりたかった。結果的にそれが「ヴェルクって面白い会社だね」というお客様の印象につながったので、ブランディングにも役立ったと思います。もちろん、苦労したぶんオフィスに対する愛着も深まりました。

 

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オフィスへのこだわり

ウォールナット調のデスクがおちついた雰囲気を漂わせる執務スペースは、家具の配置にもこまやかな配慮が施されている。居心地の良さとともに集中できるオフィス環境を目指したからだ。こだわりのポイントを聞いた。

――執務スペースのこだわりについて聞かせてください。

田向:集中しやすい環境づくりを意識しています。エンジニアは仕事に没頭する時間が長く、集中している間はできれば話しかけてもらいたくないくらい(笑)。なので、すぐ隣に人がいるような環境にならないように、一つひとつのデスク間隔を少しあけています。デスクは向き合っていますが、すぐ目の前に人がいるのも気が散りやすいので、グリーンや本棚を間に置きました。

 

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――仕事に集中するためのパーソナルスペースを重視しているということですね。

田向:はい。外部モニターを置く位置や角度にもそれぞれ好みやこだわりがあるので、フリーアドレスではなく自分に合ったデスクにカスタマイズできる固定席にしています。また、作業中に背後で人が歩いているとのぞかれているようで居心地が悪いとの声も多かったので、デスクを両サイドに配置して、中央を歩行スペースにしました。

小さな会社なので、仕事は小規模のものが多く、1~2名でプロジェクトを担当します。2人の場合は隣同士か近い席同士でチームを組むことが多いため、必要なコミュニケーションをとる際に支障はありません。軽い打ち合わせにはソファ席を使ったりミーティングスペースへ移動しています。

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理想とする働き方

エンジニアが開発の仕事を楽しめるように働く環境を整えたい。そんな思いが起業を後押したと話す田向社長。理想とする働き方、それを実践するうえで重要だと考えていることとは。

――どのような組織のあり方、働き方が理想的だとお考えですか。

田向:組織としては一人ひとり自律的に働いていることが重要。うちは日報も週報も定例会議もありませんし、細かな報告も求めません。危ないと感じたときだけ相談してくれればいいと伝えています。コミュニケーションは大切ですが、不要なミーティングをする時間があったらコードを書くほうが利益に直結するし、利益が上がったほうが皆が楽になれます。必要なことだけしっかり話し合って、あとはそれぞれの裁量でうまくまわっている状態が理想ですね。

モットーは「楽しく働く」ですが、ワイワイ楽しく働くということではありません。開発自体は本来楽しいはずなのに、この仕事に従事する人のなかには苦しいシチュエーションに置かれている人も多い。苦境の原因は、そもそもの価格設定に問題があったり発注元との調整がうまくできていないなど、フロントに立つ人間がエンジニアをきちんと守れていないことがほとんどだと思います。だからうちでは受注段階で僕がそのあたりを整えたうえで、メンバーに仕事を任せるようにしています。僕自身エンジニアで技術が大好きだから、仕事の楽しさは知っている。楽しく働ける環境を整えることが自分の役割だと考えています。

――仕事の阻害要素を取り除き、楽しく働けるように必要なゆとりをもたせると。そうしたマインドはオフィス空間にも反映されているようですね。

田向:ええ。『ヴェルクっぽい』と感じてもらえるようなオフィスになっていると思います。

――エンジニアの新しい働き方としてリモートワークも広がっていますが導入されていますか?

田向:基本的にはNGです。リモートワークではメンバーの声が拾えなくなったり、どんな状態に置かれているのか見えにくくなると思うからです。誰かがものすごく忙しい状態になっていても気づけなかったら会社として成り立たない。フリーランスが集まる組織なら別かもしれませんが、会社は個々人の仕事で完結しているわけではないので。空間を共有しながら感じ取る空気感って大切だと思います。IT が進化してもオフィスは必要ですね。

――現在、新しいオフィスを探されているとのことですが。

田向:今のオフィスは気に入っています。でも機能面でいうと経営会議などができる個室がほしいし、働き方を充実させるために執務スペースとミーティングスペース以外の、気分を変えて仕事ができるような遊びの空間もほしい。さっと腰掛けて作業できるカウンターでもリラックスできるソファスペースでもいいので、用途を限定しない空間をつくりたいですね。

次のオフィスの現在の倍以上の広さで考えています。会社の規模を大きくするつもりはないのでメンバー総数は増えても10名程度。長く居続けるでしょうから時間をかけて納得のいくオフィスを探す予定です。メンバー全員の通勤にも便利ですし、春は車窓から眺めるお堀端の桜が見事なので、場所は市ヶ谷周辺が望ましい。オフィスの顔となるエントランスまわりなど部分的にDIYを取り入れるのもアリかなと思っています。

――今後の事業展開についてお聞かせください。

田向:受託と自社開発を事業の2本柱としていますが、最近は自社開発の「board」の売上げ比率が伸びているので、これをもっと伸ばしたいですね。製品として完成している「board」の売上げが伸びれば時間的・経営的にもゆとりが生まれてきて、新しい技術投資や面白い受託の仕事にも取り組みやすくなります。「board」のセールスを任せられる営業採用にも力を入れつつ、こうしたサイクルを強化させていきたいと考えています。

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福利厚生:ここがヴェルクらしさ

①社内勉強会

月1回または2カ月に1回、仕事の引き出しを増やすため勉強会を行っている。もちまわり制で各自好きなテーマで1時間ほど話す。技術やマーケティングなど内容はさまざま。

②社員旅行

毎年実施。行き先は投票で決定する。これまで京都、長崎、香川などに行き、グルメ色の濃い旅を満喫してきたとか。「IT企業なのでいつかはアメリカ西海岸にも行きたい」と田向社長。

このほか、上期下期に各1回、打ち上げを兼ねて高級焼肉など美味しいものを食べに行く会も開催。宅配型の社食サービス「オフィスおかん」は会社が代金の半額分を補助する。

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