QVCジャパンの最新設備と“一体感”で成長を推進するオフィスと働き方

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株式会社QVCジャパン
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株式会社QVCジャパン

2000年にアメリカ・ペンシルバニア州にあるQVC本社と三井物産株式会社が合弁で設立した『株式会社QVCジャパン』。テレビショッピングを主体としたマルチメディア小売企業として、千葉県・海浜幕張地区で2001年4月から通販専門番組の放送を開始し、2004年には国内初の24時間生放送をスタート。現在ではケーブルテレビに加えて、BS・CS放送や地上デジタル放送、IPTV、携帯電話、YouTubeなど、幅広いプラットフォームを通して視聴者に番組を届けている。QVCとはQuality(品質)、Value(価値)、Convenience(利便性)の頭文字を取ったもので、この3つを徹底してお客様にお届けしようという同社の企業理念がそのまま社名になっている。また、2013年には最新の放送設備を完備した新社屋「QVCスクエア」を建設し、ここを新たな拠点として更なる変革と成長を目指しているQVCジャパン。そんな同社の新たなオフィス環境について、インターナショナル ブロードキャスト オペレーションズ バイスプレジデントのジョン・オニール氏にお話を伺った。

なぜオフィス環境へ投資したのか

2013年1月に新社屋「QVCスクエア」が竣工し、同年4月から新社屋内のスタジオで24時間365日生放送を開始したQVCジャパン。新たなオフィスの1階には、最先端の撮影環境を完備した2つのTV放送用のメインスタジオを配置。それらを軸に社内に計7カ所のスタジオを有し、同社の中核となるテレビショッピング事業拡大のため情報発信力を強化した。同時にオフィス部分の最適化を進め、快適なオフィス環境も手に入れている。同社が新社屋に投資をしたその狙いとは。

オニール氏:「QVCスクエア」の建設に至った経緯として、当社は2000年の設立当初から今の社屋の近隣にあるビルに入居して事業を展開していたのですが、そこのスペースと当社のビジネスの規模が次第に合わなくなってきました。特に物理的な要素として、テレビショッピングに必要なスタジオの数やサイズが満足できるものではなくなってきたのです。そこで現在の土地を購入し、当社の施設を全て集約した新たな社屋を建設するプロジェクトが持ち上がりました。
スタジオ設備の強化が新社屋建設の大きな理由の一つだったのですが、もう一つの目的としてオフィス環境を改善したい気持ちもありました。前のオフィスには設備面の問題もありましたが、何より当社の各部署がビル内の各フロアに点在していることが大きな弊害になっていました。他の企業のオフィスなども入っていましたので、例えばエレベーターの中で居合わせた人たちが当社の社員なのかそうでないのかも分からず、会社としての一体感があまり感じられなかったのです。テレビショッピングという仕事は複雑な業種で、専門性の異なる人たちが一緒に仕事に取り組まなければ成り立ちません。これは他の業種には見られない珍しいことだと思っています。商品を調達するバイヤー、マーチャンダイザーと呼ばれる人たち、またテレビのノウハウを持ったエンジニアやWebサイトの制作担当、コールセンター、商品の梱包・出荷などを担う流通部門の担当など、それぞれが連携してその役割を果たすことが大切になります。そのためには各部署がバラバラに動くのではなく、コミュニケーションが非常に大事になりますので、移転を機にその部分を改善したいという想いが強くありました。
現在の社屋の特徴として、1階にあるスタジオを結ぶ連絡通路「QVCストリート」から、7階の最上階までを見渡せる大きな吹き抜けのアトリウムが中央部に設けてあります。これには様々な理由があるのですが、一体感を感じられる環境を形成することもその目的の一つです。吹き抜けの左右にガラス張りになった各階の執務スペースがありまして、社員同士が各部署の様子を見ることができます。中にはお客様からの注文や問い合わせに対応するコールセンターもあるのですが、以前は独立した環境にありコールセンターという部署が何をしているのか、他の社員には把握できませんでした。加えてコールセンターはお客様の個人情報を扱っているためセキュリティーレベルも高く、一般社員は入れない区域です。ですが今のオフィスだと、窓越しからですが彼らの様子も見えるので、より親しみやすく感じます。スタジオをはじめとする各セクションを見渡すことができるので、皆で協力して仕事をしていることを改めて感じてもらえる構造になっています。社員食堂やカフェスペースで社員たちがコミュニケーションを図ることもできますし、これらも会社の一体感を醸成するために役立っています。
また、吹き抜けにはできるだけ自然光を取り入れたいという意図もあります。「QVCスクエア」の構造設計を担当していただいた『株式会社日本設計』さんの提案により、このビルの構造として南側から採光する形になっていまして、環境を考慮した省エネの効果もあります。現在の社屋によって、私たちが求めていた最新鋭のスタジオと効率的なオフィス環境の両方を実現することができました。このオフィスにはQVCの色が強く反映されていますので、社員たちもQVCの考え方やファミリーとしての感覚を実感できると思います。

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オフィス環境変革後の変化や反響

新社屋「QVCスクエア」はその突出した機能や独創的なデザインによって、社内外において大きな反響を呼んでいる。緻密な計算や狙いに基づいて今の形になったという新オフィス。移転後は様々な方面で変化も見られたようだ。

オニール氏:移転から約3カ月が経過した2013年6月頃に、社内のイントラネットを使用して社員の意識調査を実施しました。その結果86%の社員から新社屋に移転して良かったと言ってもらえました。以前と比べると多くの点が改善されていますので、色々な意味で仕事がやりやすい環境が整っていると思います。外部のお客様に対しても強い印象を与えるオフィスになっているようです。お取引先との打ち合わせスペースが7階の最上階にありまして、そちらにご案内する際に3基のエレベーターを使用するのですが、その中からも窓越しに吹き抜けを眺めることができます。この構造に驚かれる方が多いですね。テレビショッピングを放送する会社として、こういった部分も演出の一部として考えていました。打ち合わせスペースも最上階ということで自然光が多く入るため、商品サンプルの色を正しく確認することができます。以前は人工的な光の中、圧迫感のある環境で商談をしていました。今の場所は窓から見える眺望も含めて開放的でありながら、実用的な打ち合わせができるので、お取引先の方々からも好評です。
また当社は外国人のスタッフも多いため、通訳ブースを併設した会議室も設置しました。これにより通訳を介した会議も前よりスムーズになりました。以前は同じ部屋の中に通訳がいて、その話を無線機で周囲の出席者に伝えていたのですが、他のところで違う話が始まったり噛み合わないこともよくありました。今のシステムだと基本的に発言できる人が限られており、マイクを通して話せるのは2人までで、3人目の人は誰かがマイクのボタンを外すまで待たなければなりません。最初はこの形式に慣れませんでしたが、次第に会議に秩序が生まれて通訳者の負担も軽くなり、今では意外とうまく機能しています。
もう一つ、私の部署でもよく分かるのですが、採用面でも好循環が生まれています。当社のある千葉県・海浜幕張地区は都心から距離があり、採用面では地理的にやや不利な部分もありました。ですが、新社屋が完成してからは多くの方々に興味を持っていただき優秀な人材の採用にも繋がっています。また、今のオフィスは当社の存在感を象徴したものに仕上がっているので、人事からも話を聞いていますが、オフィスを見てこのような環境で働きたいなとか、こんなオフィスをつくる会社に行ってみたいなという気持ちを抱いていただけているようです。

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エンターテインメント性のあるオフィス

テレビショッピング事業をメイン事業に据える同社は、新社屋に効率的なオフィスという要素だけではなく、エンターテインメントの要素も求めた。一般の方々を対象にした、番組放送の舞台裏などを公開する「見学コース」の整備も計画当初から組み込まれていたものだという。こうした方針の裏には、テレビ事業者として“楽しさ”を追求するQVCの姿勢が隠されていた。

オニール氏:今の社屋の中には「QVCショップ」というお店もありまして、iPadで商品を選んだり、当社のオリジナルグッズなども購入できるようになっています。またオフィスの移転プロジェクトの一環として、一般のお客様を対象にした社内やスタジオの見学ツアーを実施することも計画していました。「ビューイングギャラリー」と呼んでいる、放送中のスタジオを見学してもらうための専用施設もあります。こちらは整備する際にかなり気を遣いました。本来スタジオは自然光が入ってはいけない場所で、人工的な照明の中で撮影を行います。中を見学するために窓を設けると、そこから意図していない光が入り込んでしまいます。そのため「ビューイングギャラリー」内は暗い空間にして、余計な光がスタジオに入らないようにしています。また「ビューイングギャラリー」の位置も重要な要素でした。グリッドという照明などをぶら下げる装置の下の空間に合わせて「ビューイングギャラリー」の窓を設置しているのですが、この位置ですと撮影の邪魔にならず、放送中のスタジオの様子をよく見ることができるんです。実はこのビル、1階の大型スタジオや「ビューイングギャラリー」の影響などにより、各階の高さが全て違うんです。結果としてそうなったわけですが、建物として非常に複雑な構造になっています。
また、社内の色使いなど、デザインが独特という点もよく話題に挙げていただくのですが、こちらも当社の方針によるものです。テレビショッピングを運営するには、やはり想像力や新しいアイデアが非常に大事になります。同時に、楽しくなくてはいけません。当社は24時間生放送を実施していますので、深夜や早朝など一般的にみるとイレギュラーな時間帯に働いている社員もいます。そんな中で何の特徴もないオフィスに長時間いると良いアイデアも出ないでしょうし、気持ちの上でも暗い気分になってしまうと思い、できるだけ楽しく刺激のあるワークスペースを提供しようと考えました。各階ごとにテーマが異なり、行く場所によって違う雰囲気が味わえるのもそういった設計方針によるものです。オフィスデザインに関しては『ゲンスラー アンド アソシエイツ インターナショナル リミテッド』さんに担当していただき、彼らがアメリカ・カリフォルニア州の先進的なオフィスなどを参考にデザインを考えてくれました。各階の中央にはコーヒーマシンなどを設置したカフェスペースもあります。ソファなども用意して、各部署の社員たちが自然に集いコミュニケーションを図れる場にしました。休憩はもちろん、気分を変えてこの場所で仕事をしても構いません。ただ当社の場合、経営陣の執務室も吹き抜けに面して建物の内側にあります。カフェスペースでコーヒーを飲んでいると、どこかで見られているんじゃないかという気持ちになり、ちょっとだけ落ち着きませんね(笑)。

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今後取り組みたいオフィス環境づくり

“最新鋭のスタジオ完備と快適なオフィス環境づくり”という、当初の目的を見事に実現したQVCジャパン。今のオフィスには今後の技術革新や変化に備えて、拡張性や汎用性も持たせている。当面は今の環境を維持する方向だというが、あらゆる変化にも即座に対応できるオフィスとして、「QVCスクエア」が同社の発展において果たす役割は大きい。

オニール氏:今のオフィスは、実現したかったことがほぼ全て叶ったオフィスだと思っています。大きな改善点があるという話も今の段階では出ていません。IT技術の進化によって働き方が変わる可能性はゼロではないと思いますが、それについてもある程度考慮されたオフィスになっています。当面はこの綺麗な状態を維持していきたいですね。せっかく新しいオフィスになりましたので、どちらかというと意地という部分もありますが(笑)。「Broken Windows Theory(割れ窓現象)」といいまして、建物が廃墟になって1枚の窓が割れると、次から次へと誰かが窓を割ってしまう現象があります。治安悪化の例えによく使われますが、やはり人間ですから一度雑多な雰囲気ができてしまうと、どんどんエスカレートする恐れがありますので、しっかりと今の状態を維持していきたいです。
また、当社では組織の変更や部署の異動がよく行われているのですが、その度にデスクの組み立てや解体を繰り返していたらコストが増えてしまいます。そのため、どの部署もデスクの配置を均一にして汎用的に使えるようにしました。前のオフィスは今より日本の伝統的な事務所の形に沿ったもので、窓の近くにいわゆる“お誕生日席”があり、マネージャークラスの人間がそこに座っていました。それも組織変更があった場合には席の過不足などが発生しますので、今のオフィスでは廃止しています。その分、マネージャーの席は角に配置し、やや広めのスペースを確保してスツールを置き、その場でちょっとした打ち合わせができるようにしています。この変更には当初反対意見もあったのですが、今では効果的に機能しています。また執務スペースには、随所に簡単なミーティングができるワークスペースを設けています。これも一定の間隔で配置し、どこに行っても同じような環境で仕事ができるようになっています。

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Pick Up  “ここが、QVCジャパンらしさ”

■豊富な社内イベントの開催
多くの社員を抱えるQVCジャパンでは、社員の家族も参加することができる様々なイベントを開催している。毎年夏には千葉県佐倉市にある「Distribution Center(商品センター)」を会場に、「納涼祭」を実施している。夏祭りの定番フードや金魚すくいなどの出店が揃い、多くの社員や関係者で賑わう。このイベントでは役員が出店に加わって参加者をもてなすという。オニール氏もひたすらポップコーン作りに追われていたことがあるとか。他にも、年末にはカフェテラスでQVC社員の1年を振り返る“思い出ビデオ”を上映するなど、年間を通して多様な行事を楽しんでいる。

■活発な社内の部活動
QVCジャパンの社内にはたくさんの部活動があり、それぞれ活発に活動している。「軽音部」は納涼祭のステージでも演奏を披露したりしているという。運動系の部活も多く、「ゴルフ部」「サッカー部」「野球部」「駅伝部」「ヨガ部」などに加えて、オフィスが海の近くにあるので「サーフィン部」も存在する。同社代表取締役社長の佐々木迅氏がマラソン好きということで、週1回社長と一緒に早朝ランニングを楽しむ社員ランナーも多くいるのだとか。

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Creator’s Eye  株式会社日本設計/建築設計群チーフ・アーキテクト 栗原卓也氏、建築設計群 五明俊輔氏

五明氏:新社屋のコンセプトとしてQVCジャパンからは、テナントビル内に点在していた各部署を一つに集約し、一体感を醸成できるような拠点にしたいというご要望をいただきました。そのご要望に対して当社では、ビルの中央部分に大きなアトリウム空間を設けるアイデアをご提案しました。面白いのは、大道具やセットといったテレビ放送の裏側はなるべく隠すようにするのが一般的な考えだと思いますが、そういったものも一緒に見せてしまうような構造になっているところです。各階に配置された社員休憩スペースや一般来客者向けの見学コースからセットや出演者の衣装などが見えますし、そこで働く方々の様子も知ることができます。そうした要素も見せることで、社員の方々はもちろんQVCを訪れたすべての方々が一体感を感じ取れるようにしました。「QVCスクエア」にはオフィス機能だけではなく、下層部にスタジオ施設、中層部には執務スペースやコールセンター、上層部にはホテルのような仮眠室や社員食堂、ミーティングスペースなど、様々な機能が複合的に入っています。これらを組み合わせて大きな建物の中に入れ込み、かつクライアントの要求する機能や面積を確保しなければならない点が、設計を行う上で試行錯誤した部分です。基本的に施設設計の部分は当社で担当し、それに対して外装、内装も含めたトータル的なデザイン監修は「ゲンスラー アンド アソシエイツ インターナショナル リミテッド」が担当しています。お互いに打ち合わせを重ねながらゲンスラーから提案されたイメージを当社の方で具現化し、協力して同じ空間を作り上げていきました。同社は家具の選定も担当されていますので、施設全体として見ても内装のデザインと家具が非常にマッチした、統一感のあるビルになっています。竣工後はオニール氏もそうですが、各部門の現場担当の方から「快適でいいオフィスになりました」と言っていただけることが多く、それは本当に嬉しく感じました。運用が開始されてから、エレベーターに乗っている方とその反対側にある休憩スペースにいる方が、アトリウムを挟んで手を振り合う場面などを見掛けると、当初に掲げたコンセプトが実現できているのでは、と手応えを感じています。

栗原氏:新社屋に対するQVCジャパンからの要望は、分散している機能を集約することで新たな可能性を追求し、今後の発展を支える施設を具現化したいということでした。加えて日本の従来型のオフィスとは異なるものに、というリクエストも受けていました。「QVCスクエア」の施設性能に関しては、通常のオフィス以外の部分で、クライアントから求められているスペックが非常に高いものでした。放送用のスタジオをはじめ様々な機能が必要となり、機能間に制約がある中で複合建築としてどのように形にしていくのか。更には、そこにアトリウムという要素を組み合わせ、どう建物の性能を確保していくのか。これらのポイントをクリアすることが、当社に与えられた一番のミッションだったと思います。その一方でデザインワークはゲンスラーに委ねられていましたので、担当領域の棲み分けはうまくできていたと感じています。建物の骨格と機能的な要素は当社で設計を担当し、全体的なデザイン監修はゲンスラーに手掛けていただくというフレームでプロジェクトを進めていましたので、お互いに悩んだポイントが若干異なっていたのではと思いますが、うまく協調し完成させることができたと思っています。

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