夢戦士が帰る城―。独自の経営スタイルをビジュアル化した「ジー・ブーン」の独創的なオフィス空間

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ジー・ブーン株式会社
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ジー・ブーン株式会社 代表取締役社長 後藤稔行氏

秋葉原電気街の喧騒をぬけた一帯に広がるオフィス街。やや古びた小規模ビルの最上階に、独創的な世界観に彩られたテーマパークのようなオフィスを構えているのがジー・ブーン株式会社だ。

大手商社や大手通信業者を顧客にもつITアウトソーシング事業を中核に、タイ・バンコクでの日本企業向けアジア進出支援事業やフォトスタジオなどのサービス事業、秋葉原でのレンタル会議室事業など、新たな事業にも挑戦する同社は、代表取締役の後藤稔行さんが2006年、「何をやりたい」かよりも「誰とやりたい」かを立脚点に仲間とともに創業。経営者の描く夢や計画に添って利益を追ういわゆる従来型の企業経営とは一線を画し、企業の夢と社員の夢を融合させる“ドリームマネジメント”という独自の経営スタイルを掲げる。夢とビジネスの共存によって意欲や成果などの最大化につなげ、企業と社員のWIN・WINの関係を目指す。そんな新しい働き方を実践するオフィスとはどのような空間なのか。

オフィスになぜ投資したか

創業は大手町にある一般的なレンタルオフィスで始まった。当時の価値観は現在とは間逆で、オフィスに極力コストをかけないことを信条にしていたという。現在のようなオフィスを構えるに至った経緯とは。その理由などをきいた。

――創業時は一般的なオフィスに入居されていたとのことですが。

後藤:はじめは一流のオフィス街で会社を構えることへの憧れから(笑)、大手町にオフィスを借りました。そのときはオフィスは極力コンパクトにしてそこにかける費用は待遇面などで社員に還元したしたほうがいいという考えだったんです。けれどもそのやり方は結局うまくいきませんでした。IT企業など在宅ワークを導入するところは多いけれど、それでは十分なコミュニケーションはとれません。うわべだけの関係になってしまい、仲間がつくれない。だから皆が集まったり帰ってこれる場所をつくろうと思いました。企業が伸びるためにはオフィス投資はとても重要だと今は思っています。

――オフィスに投資することで得るメリットは多いということでしょうか。

後藤:はい。社員が自慢できるようなオフィスは人材集めでも好影響をもたらしますし、事業面でもお客様から一緒に仕事をしてみたいと関心をもってもらえます。さらに、面白いオフィスがあるということでメディアに取り上げられれば、大きな宣伝効果もあります。小さな企業であればあるほど尖ったオフィスをつくったほうがいい。

――確かにテーマパークのような内装をもつ振り切ったオフィスですね。

後藤:うちは企業の夢と社員の夢を融合させるドリームマネジメントを経営理念にもつドリーム企業を標榜しています。だから前提として夢が感じられないオフィスでは話にならないという面はありますね(笑)。自分達がめざしていることを見える化してプレゼンテーションする必要がありますから。

夢というもののわかりやすいイメージの一例として、ディズニーのような非現実の世界がありますが、そうした非現実の夢の世界を、夢を追い続ける僕らの現実世界に近づけた見せ方をオフィス戦略に取り入れようと考えて今のオフィスをつくりました。

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オフィスのコンセプトとこだわり

「サラリーマンが働きながら自分の夢をかなえられることが当社の企業としての夢」という後藤社長。一般的に企業は自社利益を追求するものだが、同社は利益よりも社員の夢との融合を目指す。だから採用時に最重視するのは夢を本気で追える人。そんな社員達をバックアップするオフィスのコンセプトとは。

――オフィスの空間コンセプトについて聞かせてください。

後藤:中世ヨーロッパの古城をベースに、アンティークとファンタジーの世界をミックスさせています。デザインコンセプトはアンティークファンタジーと名づけました。知り合いの漫画家が描いてくれた空間イメージのイラストを僕が設計図として仕上げ、特殊内装もあるのでいくつかの施工会社さんに依頼。僕も社員も壁をぬったりタイルをはったりしました。もともと戦に耐えられるようにつくられたお城は企業のオフィスと同じような存在だと思います。僕は社員を夢戦士と呼んでいますが、ここは彼らが帰る場所なんです。

――堅牢そうな門扉があったり、甲冑が飾ってあったり、しつらえもユニークです。社員の夢を応援するための空間の仕掛けなどはありますか?

後藤:執務室の壁のメッセージなどで、社員達が夢を追う意識をつねに保っていられるようにしています。脳はもともと忘れるようにできていますが、目標を達成するうえで忘れる機能は厄介。なので思い出すための工夫が必要です。いくつかの部屋の壁に描いたメッセージは記憶を呼び起こすフックの役目をはたす。社員に夢を思い出させる仕掛けです。

オフィス環境がもたらす効果と新しい働き方

IT事業、アジア進出支援事業などの事業基盤は、同社にとってはいわば社員が夢をかなえるために用意された武器だという。夢に向かう社員のパワーをビジネスに活かし、相乗効果を狙う同社のオフィスがもたらす効果や働き方について聞いた。

――2010年にこのオフィスを構えたことで生まれた大きな効果とは。

後藤:オフィス以外にも戦略は立てていますが、圧倒的に人材の応募率が増えました。なかでもエンジニアは一般的には人材不足といわれていますが、うちでは年間だいたい1000名弱の応募があります。新卒でいうと、女性から敬遠されがちなIT業界にあって、うちの場合は7割が女性からの応募です。

――帰社率も上がりましたか?

後藤:ええ。出先から特別な用事がなくても帰ってくる社員もいます(笑)。帰社する理由は、目的意識がはっきりして働くのが面白くなってきたということもあるだろうし、オフィスの居心地のよさも大きいと思います。たとえば、毎週水曜日にはオープンキッチンで将来は居酒屋を経営したいという社員が手料理を振舞うんです。おいしそうなにおいがあるだけでも心地よい気分になりますよね。においと記憶は関係が深いから、外でおいしそうなにおいをかぐとオフィスを思い出して帰ろうかなと思うこともあるかもしれませんね。

たとえばいつか居酒屋をやりたいと思っているその社員にしても、いざ夢をかなえようとすると普通は脱サラして自分の貯金をくずして勝負しますよね。けれどそれでは失敗したらすべてゼロになってしまう可能性がある。うちの経営のやり方は、ITでつながっているお客様やアジアの仕事でつながるお客様など、事業で培ったネットワークもすべて社員が夢をかなえるときに使えるようにしています。

――今年(2016年)は秋葉原駅に程近いビルで、レンタル会議室の事業も開始されていますね。映画ハリーポッターのセットのようでいわゆるレンタル会議室のイメージとはかけ離れています。

後藤:脳は視覚や香りなどの刺激で活性化されるものです。会議する部屋も、クリエイティブな思考を生むために脳に刺激を与える空間が必要だと思います。大企業ならそれが作れても、小さな企業がそこまで空間投資をするのは難しい。なのでシェアするサービスを始めようと、アイデアの城というレンタル会議室を事業化しました。もともとこの部屋は去年(2015年)、ドリームセミナーという社員向けの教育セミナーをするスペースとしてつくったものですが、外部の人にも好評だったので事業につなげました。60型4面ディスプレイと大型電子黒板、音響設備などを備え、予約が入っていない時間帯は自社のセミナーやイベントにも使っています。

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――社員間のコミュニケーションについて聞かせてください。

後藤:僕はコミュニケーションを信頼関係と定義づけ、そうした信頼関係を築くために年1回社会人文化祭というビッグイベントを催しています。映画づくりやプロモーションビデオ制作など、これまで経験したことのないようなことを短期集中で協力しながら皆で創るから、ものすごく関係が近くなります。信頼関係がもてる土台をつくっておくことでコミュニケーションの円滑化を図っています。

このほか年5回イベントを開催しますが、内容については社員から企画を提出してもらいます。たとえばテラスでするバーベキューもただ普通にするのではなく、世界の肉シリーズと銘打ってさまざまな肉を焼いて食べる(笑)。かなり盛り上がりました。

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――現在のオフィスを構えて6年経ちました。次につくるとしたらどんなオフィスにしたいですか?

後藤:アイデアはいろいろあります。たとえばディズニーシーのタワー・オブ・テラーのようなインパクトのある建物のオフィス、工場の跡地をリノベーションしたオフィス、海辺の船が停泊できるオフィス……。ジー・ブーンがまた何かやってるぞ、と思われるようなオフィスをつくりたいですね(笑)。

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福利厚生:ここがジー・ブーンらしさ

社員の夢を応援する独創的な仕組みを構築する同社。

たとえば人材育成としては、「社会人インターン制度」という業務の2部制を導入している。メインの仕事とは別に、さまざまなセクションに任意で参加できるというもので、複数業務を経験させることでバランスよく業務がまわせる人材を育てることを狙いとしている。

入社前と後に実施する「ドリームデザインセミナー」は、自分の夢を定義するための啓発セミナー。会社の夢と自分の夢を明確化して2つの夢を達成させるための事業運営などについて考えるというものだ。また、自分の夢をつねに意識できるように、名刺には各自の夢が印刷され、夢にちなんだニックネーム制も導入されている。

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